第21章 右腕の代わり
し「清水さんも少しは煉獄さんを注意して下さい。煉獄さんは清水さんの言う事なら聞くようなので。お願いしますよ。」
「え……、そんな、」
柱に柱を注意しろと命令され、菫は酷く狼狽えた。
しのぶの有無を言わさない雰囲気から逃れるように杏寿郎を見る。
すると杏寿郎はにこりと微笑んだ。
杏「君が注意してくれるのなら安心だな!」
それを聞いた菫は完全に固まってしまった。
し「では頼みましたよ。次はありませんからね。次、五月蝿くしたら治療を断らせて頂きます。」
「そんなッ」
―――パタン
菫の引き留める声はしのぶに届かなかった。
「…………煉獄様。」
菫は戸を見つめながらそう声を掛けた。
杏寿郎は微笑んだまま首を傾げる。
杏「どうした。」
菫はパッと振り返り、頭巾を取って深く頭を下げた。
「先に申し上げておきます。私は煉獄様に『静かにしろ。』などとは口が裂けても言えません。私に出来る事は、煉獄様が自らお声を抑えて下さるよう願う事だけです。」
そこまで言うと菫は眉尻垂れた顔を上げた。
「…もし…、煉獄様が適切な処置をお受け出来なくなるような事態になったら、私は…、」
菫が泣きそうな程に顔を歪めると杏寿郎はビクッと肩を揺らした。
杏「小声で感想を述べるよう全力で努力するので泣かないでくれ…!」
早速小さくなった声に菫は全身の力を抜いたのだった。