第21章 右腕の代わり
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し(まさかあの煉獄さんの地雷を踏んでしまうとは…。)
しのぶは杏寿郎に病室を追い出されてから書庫へ向かい、薬学の書物を読んでいた。
そうして反省していた時、病室から『うまいッ!!!』という大声が聞こえてきてピキッと青筋を浮かべた。
し「何なのでしょう…先程はしおらしかったと言うのに。」
そう黒い笑顔で独り言を呟きながら廊下を進み、声の出処である杏寿郎の病室の戸を開く。
し「煉獄さん、蝶屋敷では『うまい!!』、蝶屋敷では私の『うまい!!!』煉獄さん…『わっしょい!!!』…。」
しのぶは更に青筋を増やし、それに気が付いた菫は目を見開いた。
「煉獄様、少しお声が大きかったようです。」
菫の言葉を聞いた杏寿郎が声を上げるのを止める。
そして状況を把握した。
杏「胡蝶、先程はすまなかった!!もう大丈夫なので気にしないでくれ!!!」
しのぶは杏寿郎の顔に太陽の様ないつもの笑みが戻っている事に安堵しつつ、眉を寄せながらベッドへ近付いた。
一方、菫は何の事を話しているのか分からなかったが、柱の会話に入らないように静かにしていた。
し「それはとても喜ばしいですが、此処は蝶屋敷です。何度も言いましたがお静かに願います。」
杏「すまない!」
そう元気に謝ったが、杏寿郎は口角を上げながらも少し眉尻を下げてしまった。
しのぶはそんな杏寿郎から菫へと視線を移す。