第5章 桜 色 の 泪[煉獄杏寿郎]
どこか我慢をさせているのではないかと時折心配になる。今回は連絡もせず、約束も守ってやれなかった。
いくら鬼殺に理解があるとは言え、相当不安で淋しい想いをさせていただろう。
「とても心配しました。でも、無事なら何でも良いのです。また逢える、声が聞ける、触れられる。それでっ…」
力なく笑う君はあまりに愛おしく、言い合えるのも待てず唇を塞いでしまった。
「こう何日も逢えずにいると君が足りなくなるものだな」
「杏寿郎様はせっかちです。まだ玄関ですよ?」
「どこでなら良い? 布団の中か? とても我慢できそうにないのだが」
「まずは湯浴みしないといけません。温まってから…その…」
「続きをするか?」
俺の隊服を握りしまたまま俯いて頷くはなを見た時、俺の中で何かが弾けた。
「キャッ…!」
はなを抱き上げ、風呂場へ向かう。こうなったら共に湯浴みだ。
「湯浴みをしよう」
耳元で囁くと、真っ赤な顔で俺を見上げてくる。俺はこの顔に弱い。
「一緒にですか?」
「ダメか…? 屋敷の風呂は広い。二人でもゆったり入れる」
あまりに君が愛らしく、湯浴みの間すら離したくないと思ってしまう。少しでも早く君を感じたい俺のわがままだ。
「杏寿郎様も冷えておられますので、早く入った方が良いですし…わかりました。一緒に入りましょう?」
恥ずかしそうに目を潤ませて承諾する姿は俺にとって昂らせる要素でしかない。
雨に打たれた体は昂りによってか、いつも以上に熱を帯びていた。
脱衣場ではなをそっと降ろすと、再び唇を重ねながら帯を解く。
唇は重ねたまま隊服も一枚一枚脱いでいった。
「先に謝っておくが、俺は抑えられそうもない。…君が欲しい」