第9章 凪の奥の激情[冨岡義勇]
強く握り締める拳を解き、手を滑りこませた。俺の手をきつく握るはなは痛みを堪えるように口を引き結んだ。
「はな、俺の指を噛め」
かぶりを振るはなの口唇を割り、指を差し込んだ。涙を滲ませて俺の指を咥えるはなは煽情的で、腰が疼くのを堪え少しずつ奥へと進み入れる。
「んんっ…ふっ…」
「もう少し耐えてくれ」
「んっ…」
俺の指を時折噛みながら、最奥まで耐えたはなの額には汗が滲んでいた。
「よく耐えた」
「義勇さん…動いて」
「痛むだろう」
「大丈夫です。せっかく義勇さんを受け入れられたのだから、今度は義勇さんが気持ちよくなる番です。私の中は…気持ちいいですか?」
「己を見失いそうになるほどだ」
はなの口元は小さく弧を描いていた。
その唇に重ねたいと何度も思った。この肌に何度触れたいと思ったことか。流れるように美しい髪も。
己の昂りを鎮める時、褥の中のはなを思い描いた。穢してはいけない存在とわかっていながら、己の欲のためにはなを使った。そのはなが今俺の腕の中にいる。こんな状況で、好きに動けと言われて耐えられる男がいるのだろうか。
「大丈夫だから。義勇さん…お願い」
「泣いて懇願しても止められないがいいのか」
「はい…!」
はなが背に回した腕に力を込めた。それを合図に緩く腰を打ち付ける。
「あっ…んっ…」
初めこそ苦悶の表情を浮かべていたはなだが、抽送を繰り返すうちに声色が変わっていった。