第2章 【同業者】
『貴方は女に飢えた獣か何かですか…?女性の身体に勝手に触れようだなんて。』
「確かに海藤さんは獣っぽいけど…」
「はぁっ⁈ター坊も頷いてんじゃねぇよ!俺は女にモテるから飢えてなんかねぇし、第一俺は獣じゃねぇ人間だ!」
一生懸命否定する海藤の姿を見て香は深くため息を吐く。
『はぁ…。そんなに見たいなら外しますが。』
気怠げに帽子とマスクを外して見えた香の容姿に海藤はテンションが上がった。
「おぉっ⁈思った通りだ…!つり目だがパッチリした目に長いまつ毛、整った鼻と艶のある薄い唇…」
「確かにさおりさんや真冬にも負けないほどの美人だね。」
海藤のグルメリポーターのような感想にうんうん、と頷く八神。
そんな2人の様子に再び香はため息を吐いた。
「んまぁ…"ただの女"ではないことは分かったな。さすが"神室町で1番信頼性のある探偵"と名乗るだけある。」
「さっきの…海藤さんをねじ伏せた技は何か習ってたりしたの?」
『えぇ…まぁ。祖父に合気道を。それに自分なりのアレンジを加えたようなものです。』
八神はコーヒーを淹れながら香の話を聞いた。
そしてなるほど、と驚く。
淹れたコーヒーをテーブルへと運び香と自分の座る椅子の前に置いた。
「ター坊俺の分は?」
「海藤さんは自分で淹れて。」
「何だよ、ケチくせぇ。」
ブツブツ愚痴を溢す海藤を横目に香は淹れてもらったコーヒーを一口飲んでから口を開いた。
『一つ、お聞きしたいことが。』
「ん?」
『先程貴方が鵜沢に見せていた弁護士バッジ…あれは本物ですか?』
「あぁ…これのこと?」
八神はポケットから弁護士バッジを取り出し手のひらに乗せたまま香に見せた。
『はい。まぁ私はその辺詳しくは分からないので偽物を見せられても本物との見分けがつきませんが…。それはハッタリ用ですか。』
「…うーん。まぁハッタリ用と言えばハッタリ用なんだけどちゃんと本物だよ。」