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裏夢・短編 詰め合わせ【東リベ etc.】R18

第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ




船の上で仰向けに寝転びながら
次々に打ち上げられていく花火を見上げる

毎年
なんとなくこの場所へひとりで来ていた


身体中に響く音と
自分の真上で弾ける色とりどりの光

その光景の中に
今年はレイナがいた


耳に心地良い彼女の声で『キレイだね』と言われて
イザナは、初めてそれをキレイだと思った


視線が合うと
柔らかな笑顔が返ってくる

花火と同じ色に変わる瞳の中に
まだ幼かった頃のように無邪気に笑う自分が映っていて
胸の奥がギュッと苦しくなったイザナは
宙を見上げて、大きく深呼吸をした









花火が終わると
他の遊覧船が戻ってくる前にその場を後にした

人の波が落ち着くまで
バイクの側のベンチに並んで腰掛ける


『ホンっトにキレイだったぁ…あんな近くで見たの、生まれて初めてだよ』

「…そっか」


いつもより饒舌なレイナがさっきからずっと笑顔で
イザナは、思い切って誘って良かったと思った


『…黒川クンと一緒にいると…初めてのことがいっぱいで、すごく楽しい…』


対岸の夜景が煌めく水面を見つめながら
独り言のようにポツリと言う

潮の香りを含んだ柔らかな風が
彼女の髪を揺らしていた


『…ねぇ黒川クン……今日のコレって…デート?』

「……ぇ…?」


突然の質問に驚いて、固まってしまう


『…もし、そうなら……もう一回…手繋いで欲しいな…』


前を向いたままそう言ったレイナの頬がほんのりと紅く染まっていて
彼女も少しは自分に好意を持ってくれているのかも知れないと思ったら、勇気が出てきた


「……」


ベンチの上に置かれている小さな手に自分の手を重ねて、そっと握る

恐る恐る顔を上げると
いつの間にか自分の方を向いていたレイナと目が合って
心臓がトクンと高鳴った



「……っ……あの………あのさ……オレ…」





" 前からずっと好きだった "



" 初恋だった "



" 会わなくなってからも、忘れられなかった "




そんな言葉が次々に込み上げては

喉元につっかえていく







「……オレ……今、彼女いないからさ……試しに付き合ってみねぇ?」




追い込まれたイザナが
掠れた声で絞り出したのは



何とも決まらない
ハッタリに満ちた戯言だった






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