第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
レイナを先導して橋を渡り
中華街側へ戻る
まるで自分の庭のように毎日顔を見せに来ているイザナに
商店の人達が親しげに声を掛けてきた
「お、学校終わったのか?」
「今日も髪型キマッテるなァ」
「アラ?イザナ、またちょっと背伸びた?」
「甘栗、持っていくか?」
そして
隣にいるレイナの存在に気が付くと
皆、冷やかすように「彼女か?」と聞いてくる
その度にイザナは戸惑いながら説明した
連れて来たのは
裏通りにあるさびれた喫茶店
昔から真一郎と2人でよく来ていて
初老のマスターともすっかり顔見知りになっていた
窓側のテーブル席に、向かい合わせに座る
「………ハァ…………何でみんな同じ事聞いてくるんだ…」
『…黒川クン…みんなに可愛がられてるんだね…』
「は?…っ…オレ、もうガキじゃねーし」
子供扱いに少しムッとしたイザナを見て
レイナはクスクスと笑った
他に客の居ない薄暗い店内を見渡しながら
彼女が『素敵なお店…』と言うと
頼んだ飲み物を運んできたマスターが「若いのによく分かってるねー。ハイ、これサービス」と、クッキーを出してくれた
「ありがと、マスター」
『…ありがとうございます』
マスターは「デートかい?ごゆっくり」と微笑むと
イザナが反論する間もなくカウンターの中へ戻っていってしまった
「…な……何だよ…マスターまで…」
『……フフ………そんなに付き合ってるように見えるのかな……私たち…』
「……ぇ…」
レイナはアイスティーに細いストローをさして一口飲み
向かいに居るイザナを見た
『……何か、不思議な感じだね…』
「……ぁ………ウン…」
『黒川クン…元町、よく来るの?』
「…んー…橋の向こうはあんまり……今日はたまたま逃げたヤツ追っかけ…て……って……………いや、何でもない…」
慌てて言葉を濁すイザナに
レイナはまたもクスクスと笑う
「……」
その笑顔から目を逸らせないでいると
彼女は突然真面目な顔をした
「…?…」
身体を前に乗り出すようにして
小さな声で言う
『…黒川クン…』