第1章 ※笑顔の裏側
「………。」
杏「勿論、無理にとは言わない。鬼殺隊に加わる者は皆何かしら抱えている。君も簡単には話せない理由があるのだろう。」
杏寿郎によって話題が明確にされると清宮は安堵すると共に一度口を閉じてから視線を机へ落とし、再び口を開いた。
「私は稀血なのです。」
清宮は『そうだったのか。』と意外そうに言う杏寿郎に頷く。
そして昔を思い出すと目を細めながら少し表情を緩めた。
「そのせいで幼い頃 鬼に攫われてしまったのですが…頼もしい鬼殺隊の方に助けて頂いたのです。私は弱い自身が嫌で親から許可を得られないうちから毎日家を抜け出しては自力で見つけ出した育手の方に修行をつけてもらい…、」
そう説明しながら視線を上げると杏寿郎は楽しそうに微笑んでいる。
「…………杏寿郎さん…?」
杏「む、どうした。続けてくれ!」
澄ましていた清宮が頬を緩ませてお転婆な話をする姿が杏寿郎にとっては好ましかったのだ。
しかし、杏寿郎の楽しそうな笑みで我に返った清宮の顔にはもう柔らかな表情は無く、代わりに澄ました表情が戻ってきてしまっていた。
杏「よもや…もう消えてしまうとは。滅多に見られるものではないという事か。」
「…何がですか?」
杏「いや、気にしないでくれ。伝えたらもう二度と出会えそうにないのでな。」
その後 清宮は困った様に首を傾げつつも自身の生い立ちについて語った。
その流れで杏寿郎も自身の家庭について話し、清宮は漸く煉獄家が崩壊寸前であることを知ったのだった。
そこに丁度 杏寿郎の弟の千寿郎が茶を持ってくる。