第1章 ※笑顔の裏側
そんな会話をするより前、自身がどうして鬼殺隊に加わったのかについて訊かれない清宮は 杏寿郎が幼かった頃の自身を覚えてくれているのだと思っていた。
しかし――、
『あの…、』
杏『む、何だ。』
『……私を覚えていらっしゃるのでしょうか?』
見合いの席の中、杏寿郎は思い切ったように訊く清宮を暫く大きな目でじっと見つめた後、少し困ったように微笑んだ。
杏『すまないが何の事かさっぱりだ!教えてくれないだろうか。』
『…………いえ、大したことではないのでお気になさらないで下さい。』
その時の事を思い出し、そして未だに何も質問されないと清宮の心にはもやもやとした何かで一杯になる。
(辛いことがあったのだろうと気遣って下さっているのかもしれない。でも…、あの提案のせいか壁を感じて不安になってしまう。私に興味が無いのではと…。ううん、何を欲張りになっているのだろう。そもそも杏寿郎さんと一緒に居られるだけで…、)
杏「清宮さん。」
「は、はい!」
杏寿郎は清宮の意識を自身へ戻させると少しだけ眉尻を下げる。
杏「どうしてそのような顔をしていたのか聞いても良いだろうか。」
興味を持たれたことに清宮はパッと顔色を明るくさせた。
しかし、口を開いたところでカチッと固まってしまう。
興味を持って欲しいなどと自身の欲を言えば "子を生す為だけの関係" さえ壊れてしまうような気がしたからだ。