第62章 【第六十一訓】酒は憂いの玉箒でも憂いの原因は酒って話
この様子なら怒っていないと安心した銀時だったが、○○からは意外な一言。
「私は怒ってるよ」
「あ?」
忘年会の夜、送るという約束を違えたことについて。
銀時は鼻から大きく息を吐いた。
「埋め合わせに夜空でも見に行くか」
「今、プラネタリウムやってないよ」
「やってる所もあんだろ」
普段行く『極楽浄土』にはないが、国内有数のラブホ街のかぶき町には、特色があるホテルが多い。
天井にプラネタリウムを備えたホテルもある。
「それは私への埋め合わせ? それとも、自分のため?」
「後で迎えに来る」
銀時は○○の質問には答えず、立ち上がった。
「糖分摂ったから、きっちり動かねェとな」
ベッドの上でと、しゃあしゃあと言い放つ。
「やっぱり自分のためでしょ」
「こんなもん食わせたお前のせいでもあんだろ」
テーブルの上には、完食されたパフェグラス。
久しぶりの糖分を僅かも逃したくないとばかりに、綺麗に平らげられている。
「偽モンの夜空が嫌なら、遠くまで行って星空観測でもいいぜ」
十四晩、野外で吊るされていた銀時の目には、ずっと星空が映っていた。
「迎えに来るまでに考えとけ」
仕事を終えた○○は、店で銀時を待った。延々と待っていた。
一時間待っても、迎えは来なかった。
「あの嘘つき男」
銀時は○○を迎えに向かっていた。
途中で見かけた長谷川からとんでもない事実を聞かされた銀時は、再度○○との約束を破って居酒屋へと走った。
酒の力で記憶を消し去らなければ、再び○○にまみえることも出来ない程の、衝撃の事実を聞かされて。