第62章 【第六十一訓】酒は憂いの玉箒でも憂いの原因は酒って話
○○は不審がっている。近頃、銀時が変だ。
二人のデートの定番はラブホテル『極楽浄土』だった。定番どころではない。一択だ。
それなのに、なぜ、観覧車で並んで座っているのだろう。
○○と銀時は、大江戸遊園地にてデート中。
「いやー、高いところから見るかぶき町も汚ねェなァ」
腕をこまねき、銀時は呟いた。
映画館に動物園に喫茶店――この所のデート場所。
銀時らしくない。何か、裏があるとしか思えない。
「……そうか、そういうことか」
○○は俯く。
「○○?」
膝の上で握った拳が震えている。
「私のカラダに飽きたんだね」
「あ?」
○○のボディは銀時の好みではない。胸に大きな刀傷もある。
それを理由に、捨てられる可能性は充分にある。
まずは体の関係を清算し、デートも徐々に減らしてそのままフェードアウト。
そう目論んでいるに違いない。
「俺を体目的の男みたいに言うな!!」
「じゃあ、なんで映画とか遊園地なの? おかしいよ、銀さん!!」
「ラブホしか行かねー方が普通は怒るだろ!!」
銀時は溜め息を吐いた。
「こういうデートが嫌なわけじゃねェだろ」
「え? そりゃァ、まァ……」
裏がないのなら、もちろん楽しい。
付き合い立ての頃のデートが最近の場所なら、純粋に喜んだだろう。
最初からラブホテルにばかり連れ込まれていたせいで、普通の価値観を忘れている。