第5章 第四章君が好きだから
私の周りは優しい人が何時も傷つく。
あの二人は本当に優しいのに、本当の意味で見てくれる人が少なかった。
「響も律も見た目の派手さで判断されるんです」
「そっか…」
「他人は彼等の外見だけを愛して心を愛そうとはしない。それが解っているからこそ余計に二人は距離を取ってしまう…私も強く言えないでいるんです」
大人になって割り切れるようになったけど、あの二人は似ている。
あの時、捨てられた子猫のような表情をした彼に。
「特に律は極端なまでに人付き合いができなくて、我儘だったんです」
「あー…」
「その癖天才肌で、周りと歩調を合わせるのができなくて…何度対人関係でトラブルを起こしたか」
子供の頃から常に歩く先で問題を起こしてしまった事があり、頭を抱えた。
まぁ、そのしわ寄せが響に来ていたのだけど。
「けれど、律さんは優しい人だよ。環君や陸君に対しても愛情を持って接している」
「彼は環と同じ環境でした。だから余計に解るんです」
我儘で横柄な態度は多いけど、律は孤独の辛さを誰よりも理解している。
「律も響も根っこは同じなんです。人を拒絶しながらも誰よりも優しい…そして懐に入った人は何が何でも守ろうとします」
「奏音さん」
「だからあの二人は未だに私に対して過保護です。時折それが申し訳なく感じます」
二人は今でも私を守ろうとしてくれている。
「二人はお姫様を守る騎士だね」
「姫という柄ではありませんが…」
万理さんは二人に対してどういう発想をしているのだろうか。
「学生の頃から一緒に音楽をしていたんです」
「高校生から?」
「いいえ、中学生からですね」
「えっ?そんなに前から?」
バンドを結成したのは私が12歳の頃だった。
「五人編成のバンドを組んでいたんですよ」
「音楽をしていた事は聞いていたけど」
「はい、あの二人の前では言うべきではないと思ったので隠していました。すいません」
私の過去の事は多く語らないようにしていた。
二人を傷つけてしまうし、私自身も舞台から退いた身だから。
「俺によく聞かせてくれた曲は、君が作ったの?」
「はい、正確には母が父に宛てたラブレターなんですが」
私が小さい頃に亡くなった母は父への愛を音にしていた。
その曲を私がアレンジしたものだったのだ。