第5章 第四章君が好きだから
【万理side】
仕事が早く終わった俺達は駅から降りて街を歩いていたが、人込みが心配で奏音さんの手を繋いだ。
…が周りからすれば、男同士が手を繋いでいる光景は好奇の視線に晒されている状況だった。
まぁ、今さら気にしないが。
街を歩くとチラチラと奏音さんを見る視線が気になる。
女性はまだいいが、男が嫌な目で見ていた。
渋谷付近では芸能人のスカウトマンもいるから、しっかり見て置かないといけない。
そう思った矢先。
「万理さん、少し待っててください」
「え?ちょっと…何処に!」
俺の手を離しいなくなってしまった。
混雑し過ぎた所為で後を追いかけるも見失ってしまった。
十五分程してようやく奏音さんが戻って来た。
「万理さん!お待たせしました!」
まったく何所に言っていたんだろうと思ったが、絶句した。
「奏音さん何処に行って…え!」
目の前にいるのは男装姿を解いた奏音さんだった。
あの良き一度だけ見たきりだったが、今は綺麗に化粧をして少しだけヘアメイクをして白い膝丈ワンピースを着ていた。
ワンピースの裾はレースで重ね合わされており膝の部分が透けて見えるデザインで、インナーが胸元を隠しているが程よくチラ見できる状態だった。
下手に露出するよりもまずい。
男は見えすぎるよりも程よく見える方がそそるし、何より体のラインがくっきり解るワンピースは奏音さんのスタイルの良さを強調している。
「おい、やばくね?」
「すげぇ美人でスタイル良いよな…それにあの体」
通り過ぎる通行人が不愉快な事を言っている。
まずい…
かなりまずい!
こんな街中でこんな格好をさせるわけにはいかないが、奏音さんは俺の為にしてくれたので文句を言えない。
可愛い…
すごく可愛いな。
せめて街中ではなかったらもっと良かった。
俺の為にわざわざ男装を解いてくれたのも嬉しいけど、露出はやばい。
とにかく羽織っているカーディガンをしっかり着せよう。
それからすぐに何処か店に入ろう。
いや、直帰していいからすぐに帰ろう。
これ以上狼の目に晒したくない。
俺は思った以上に独占欲が強く、心が狭いのだと知った。