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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第7章 看病五日目 謙信様と餃子


(ま、待て。この女…っ)


俺に『あーん』などと言ってくる人間がこの世に居たとは。

頬に熱が集まるのをおさえきれなかった。


謙信「この俺につまみ食いを強要するとは、なんという女だ」

「べ、別に強要はしてませんけど、今が一番美味しい時だから食べさせたかっただけです!」


慌てた舞が箸を置こうとしていて、突然それが惜しく見えた。
俺に食べさせたかったというのなら仕方ない。


謙信「仕方ない、味見をしてやろう」


箸を辿って見ていくと舞と目が合った。土間で、しかも立ったまま食べた経験など皆無だが…悪くない。

口に入った物を咀嚼(そしゃく)するとカリカリと歯ごたえがよく、うまかった。
鶏の皮にこのような食べ方があるとは知らなかった。


謙信「この歯触り、なかなかに良いな。塩味が効いて美味しい」

「お口に合って良かったです。これを食べながら飲むのが大好きで…」


そう言う顔は寂しさを漂わせている。


(もしや……)


餃子を一緒に作っていたのは父親だったと言っていた。


謙信「これを食べながら飲むのが好きだったのはお前ではなく、父親か?」

「え……」

謙信「驚くことはない。お前は本当にわかりやすい」


ささいなことで故人を思い出してしまったのだろう。
この女に翳った顔など似合わぬ。気休めにしかならないだろうが頭を撫でてやった。


「ええ、餃子も、鶏皮せんべいも父の好物でした。思い出の料理です」

謙信「お前は二親を失くしていたのだな。思い出すのは辛くはないか」

「母のことは覚えていませんのでさして辛くはありませんが、父のことは全然辛くないといえばウソになります。
 けれど誰の言葉かは知りませんが『故人を思い出す人が居なくなった時、人は本当に死ぬ』って聞いたことがあって……」

謙信「っ」


舞の言葉が鋭く胸に突き刺さった。


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