第7章 看病五日目 謙信様と餃子
具材を全て包み終え、立ち上がろうとした舞を引き留めた。
謙信「舞、こっちを向け」
「…?はい」
素直にこちらを向いた頬に手をのばした。
(素直すぎる。たやすく唇を奪われはしないか)
心配になったが、この女が素直すぎるからこそ誰も手を出さぬのかもしれない。
手のひらは汚れていたので手首の辺りで頬の白い粉をぬぐい取る。
頬がすべすべしていて餅のように柔らかかった。
(柔らかいな、お前は……)
とっくに粉はとれていたがつい多めに擦ってしまった。
丸い目を瞬かせ身を任せてくる様は小動物のようだ。
ふと城の兎達を思い出し、目の前の女と比べて笑みがこぼれた。
謙信「…粉がついていたぞ」
「え!?ありがとうございます。やだ、恥ずかしい。いつからだろう」
謙信「最初からだ。俺がここに来た時には付いていた」
「っ、早く言ってください、謙信様」
もう粉はついていないのに懸命に頬を拭っている。
謙信「もう付いていない。擦りすぎると肌を痛める。そのへんにしておけ」
「ふふ、肌は丈夫なほうなので平気です」
恥ずかしそうに笑った顔からどうしてか目が離せなかった。