第7章 看病五日目 謙信様と餃子
謙信「…っ」
間近で見た笑顔に些か動揺したが舞が慌てて目を逸らしたので気づかれなかった。
(まったくこの女。忘れっぽいのと無防備なのはどうにかならぬものか)
表面上は平静を保ち、ぎょうざ作りに没頭する。
皮に種を乗せ、包む。簡単なように見えてなかなか難しい。
皮が破けた、中身がはみ出た、形がおかしい、くっつけたひだが離れる。
様々な困難が起こり、その度に舞は手を止め、ニコニコ笑いながら修正してくれた。
ここ数年、刀と筆しかとらなかった手が、不格好ながら大陸の料理を作っている。
城で安穏と過ごし、家臣達と居たならば経験できなかったことだ。
いつになく胸をくすぐられた。