第1章 一度見た世界
「あ……ありえない。巨人は最大でも15mのはず…!50mの壁から頭を出すなんて──、」
やがて超大型巨人は少しの沈黙の後、ゆっくりと動き出す。
「動くぞ‼︎」
そうエレンが叫んだ直後に響くニ度目の轟音と無数の落石。
超大型巨人の蹴りによってウォール・マリアの壁に穴が空き、その崩れた壁石が飛び散り破片となって石の雨を降らせた。
そして何事も無かったかのように大型巨人はその姿をゆっくりと消し去った。
「……あ……、」
「か…壁に……穴を空けられた…⁈」
わああああああっ!!!
私達の、当たり前の暮らしを築いてきた壁。
巨人の恐怖から唯一逃れられる為の壁。
その壁が、唯一の壁が超大型巨人によって破られた。
その事実を、恐怖を目の前にした時、一瞬で人々の顔は恐怖に染まる。
壁の内側へと走る人の流れができた。
「逃げるぞ三人とも!早くしないと次々と巨人が入ってくる‼︎」
事態を素早く察知したアルミンはエレナ達にこの場所から非難するように促した。
しかし、エレンは先程の超大型巨人が飛ばした破片の一つが自分達の家へ落ちていった事を思い出した。
「壁の破片が飛んでった先に家が‼︎母さんが‼︎」
「……‼︎」
そう言うなりエレンはカルラがまだ居るはずの我が家へと走った。
母親の無事を願いながら……。
そんなエレンを追いかけようと走り出したミカサはエレナが立ち止まったままな事に気づく。
「エレナ、行こう」
ミカサが声を掛けてもエレナは反応を示さなかった。
それどころか微動だにせず一点だけを虚な目で見続けている。
それでもエレナをミカサは力強く引っ張り無理矢理走り続かせた。
「もう…駄目なんだ…。この街は…もう…。無数の巨人に占領される‼︎」