第1章 一度見た世界
「ま、まだ何も言ってないだろミカサ!…それにあの時よくも親にバラしたな!」
「協力した覚えは、ない」
呆気らかんとして言うミカサに納得がいかないエレンは顔をしかめた。
「で…、どうだった……」
「そりゃあ…喜ばれはしない…」
「…、そりゃそうだよ…」
調査兵団に入るという事はつまり、むざむざと死にに行くのに等しいという事実。
わざわざ自分の子供を地獄へ送りたいなどと考える親が何処にいるだろうか……、
現状これといった成果を何も得られていない調査兵団へ入団する事は誰が考えても余りにも無謀だった。
「なっ…なんだよオマエもやめろって言うのか⁈」
「だって…危険だし…。気持ちは分かるけど…」
「さっきは"僕らは実際に壁の外へ出て確かめる必要がある。僕らにはその権利があるはず"って言ってただろ⁈他人に任せるのかよ…」
さっきまでは肯定的だったアルミンが急に引け腰になったのを見てエレンは失望した。
それを見たアルミンは元々下がり気味の眉毛をますます下げるしかなかった。
目線を川辺へと戻すと一度瞼を閉じゆっくりと開く。
その瞳には先程とは違う強い意思を持った淡い炎が燃えていた。
「確かに、この壁の中は未来永劫安全だと信じきってる人はどうかと思うよ。100年壁が壊されなかったからといって今日壊されない保証なんかどこにもないのに…」
その瞬間───、アルミンの言葉が引き金を引いたように今までに聞いた事のないような物凄い大きな音と地響き。そして雷鳴。
「は……⁈」
「な…何だ⁈」
「地震ってやつか⁈」
慌てるエレン達と音のした方向を指差す人々。
その人々の視線は全て上の方を向いていて、唖然としていた。
アルミンは人々の目線の先を自分の目で確かめる為に音の方向がよく見える通路へと駆け出した。
「アルミン、一体何が…⁈」
その方向を見たアルミンもエレンの問いかけに答える事なく同じように目を見開き唖然と立ち尽くす。
「オ…オイ…何が見えるってんだよ⁈」
急いでエレンもアルミンと同じ通路へと出て視線の先へ目を向けた瞬間、