第2章 出会う。
「・・・・」
無言で顔を上げると、そこには、一人の男が立っていた。
じーっと顔を見ていると、その男はふと苦笑いを見せる。
「こんな端でうずくまって、具合でも悪いのかと思って。
でも、具合悪いとかじゃなさそうですね」
こんなところでうずくまっている変な女に、心配して声をかけてくるなんて、なんてやさしい男なんだろう、と思って少し感動してしまった。
「心配かけてすみません、具合悪いとかじゃないんで・・・」
と喋りだした瞬間、また抑えていた涙が溢れ出してくる。
ぶわっと勢いよくあふれる涙を見て、男はジャケットのポケットからハンカチを取り出す。
「目、腫れてますねー」
こんな髪も化粧もボロボロな女に、そんなスマートな対応をするこの男は一体何なんだろう。
と思いつつ、ありがとう、とハンカチを受け取る。
受け取ったハンカチで涙を拭きながら、その男の顔を見てみると。
意外と幼い顔立ちをしていて、びっくりした。
「・・・彼氏に振られたとか?」
と、その男が冗談ぽく言う。
・・・なんで当ててんのよ。
と、目で睨んで訴えると。
「げ、図星でした?ごめんなさい!」
やっちゃったー、という感じの表情で、手を合わせて謝ってくる。
なんかそれがおかしくて。
「ふふ、いーですよ。図星だし」
その言葉を聞いて、男は、ニッと笑った。
「涙、止まりましたね」
言われてみれば。
さっきまで止めようと頑張っても止まらなかった涙がピタッと止まっていた。
結構単純なのかな、私。
「お姉さん、これからヒマですか?」