第1章 はじまり
「もう、なんなのよぉ…!」
ちょうど仕事も休みだった私は、親友の香奈と一緒に、居酒屋で飲んでいた。
「ホントだよ、直接会わずに電話で済ますとか何なの!?」
香奈とは長い付き合いで、彼氏の話はよくしていた。
朝のあの電話の後すぐ、香奈に電話をしたら、飲みにいこう!と連れ出してくれたのだ。
正直、一人だったらひどいことになっていたと思う。
香奈が一緒に怒ってくれるからこそ、気持ちも大分楽になっているのだと思う。
「あんなやつ忘れて!他に男なんてたっくさんいるんだから!」
と肩を抱いて言う香奈に、うんうんと思い切り首を縦に振り、吹っ切ろうとする。
何も考えまいと頭を振りまくり、髪の毛もぐちゃぐちゃだ。
今の気持ちを全て吐き出し、香奈が全部受け止めてくれた。
なんて素敵な友達を持ったんだろう、と感激してしまう。
幾分かすっきりした私は、香奈とがっちり抱き合い、店を出た。
香奈には、家まで送っていこうか?と聞かれたが、明日仕事な香奈にそこまで迷惑をかける気にはなれず、大丈夫、と言って別れた。
香奈と別れた後、自分では色々吐き出して気持ちは楽になったかと思っていたが、
やはり3年間一緒に居た思い出はそうそう自分を楽にさせてはくれず、途端に涙がこぼれた。
駅のホームに着き、一人でボロボロと泣く私。
さすがに一人で駅で泣くのは恥ずかしいと思うが、涙は止まってくれない。
ホームの端まで行き、うずくまって泣いていた。
ここなら誰も声をかけてこないだろう・・・・
「あの、大丈夫ですか?」
と思っていたら。
ホームの端でうずくまっていた私の頭の上から、男の声がした。