第1章 繁忙期
王の執務室の前に着き、見張りの兵に白羊塔の文官であることと王への書簡を持ってきたことを伝えて通してもらう。見張りの兵はほぼ顔見知りなので顔パスも使えるが、#NAME1#はいつもこうしていた。
「王よ、ジャーファル様より書簡を預かって参りました」
「おお、#NAME1#か。ご苦労だな」
シンドバッドはどうやら真面目に仕事をこなしていたらしい。その事にホッと内心胸を撫で下ろす。ジャーファルには刺していいと言われたが、もちろんそんな背信行為できるわけが無い。ジャーファルじゃないのだから。
「これは先にジャーファルが持ってきた書簡だ。全て目を通してサインもしてある。ジャーファルの元へ持って帰ってくれ」
「承知しました」
シンドバッドの指差した書簡の束をよっこらせと両手に抱える。シンドバッドがいつもこう真面目に仕事をしてくれていたら、ジャーファルの気苦労も少しは減るのだろうか。そう考えてから、#NAME1#は一つ気になった事をシンドバッドに尋ねた。
「ジャーファル様は、自ら進んで娼館に行かれるのでしょうか」
「……。…んっ?!何の話だ?」
シンドバッドは一瞬#NAME1#を見たまま固まったが、直ぐに話を聞き返してきた。#NAME1#はさすがに唐突すぎたかと反省するが、もう言ってしまったものはしょうがないので、シンドバッドに説明することにする。
「シャルルカンがジャーファル様を娼館に誘いに来たのです。私は、ジャーファル様はそういうところは基本的にあまりお好きでは無いのだろうと思っていたのですが、あっさりと了承していたのです」
「(ジャーファルくん疲れているとはいえ#NAME1#の前でなんて事を…)」
「ジャーファル様もやはり男の方ですし、満更でもないのかな…と」
「うーーーん…。ジャーファルの気持ちは俺には分かり兼ねるが、一つハッキリと言えることがあるぞ」
シンドバッドが得意そうな顔をして#NAME1#を見る。#NAME1#にはピンと来ずに頭を傾げることしか出来ないが、シンドバッドはふふんと得意気に鼻を鳴らすとキッパリと言い放った。
「ジャーファルは誠実な男だ。もしきちんと特定の相手がいれば、絶対にそんな所へは行かないだろうな」