第2章 冷たい胸に火が灯る
「おまたせしました」
不意にジャーファルの声が聞こえ、#NAME1#は肩をピクッとヒクつかせる。まだ心臓は落ち着いていないのに、もうジャーファルは出てきてしまった。
「あ、ぁぁ、あの…」
「ん?」
ジャーファルが布を腰に巻いただけの姿で近付いて来て、初めて見る男の人の身体に#NAME1#の血液が顔にぶわっと集結して、頬を真っ赤に染め上げる。
ジャーファルは終始優しい微笑みを#NAME1#に向けているが、#NAME1#はこういうこと自体初めての、23にもなろうと言うのに全くの生娘であるため、どのような顔をしていいのやらさっぱり分からない。
「し、刺激が強すぎます…」
顔を真っ赤にしてようやく絞り出した言葉がそれで、ジャーファルは一瞬キョトンとするが、直ぐにクスッと吹き出した。#NAME1#はそのせいで余計に顔に熱が集まってしまう。心臓の音が頭の中にガンガン鳴り響いていた。
ジャーファルは#NAME1#の隣に座ると、#NAME1#の手を取って、その甲に唇を落とす。
「#NAME1#、本当にいいんですか?今ならまだ引き返せますよ」
月明かりに照らされたジャーファルの髪が、銀色に光ってとても美しい。#NAME1#の初めて見る、ジャーファルの男の人の顔、だった。
男は皆狼だ、とはピスティの言葉だったか。
#NAME1#より年下なのに、男性経験は圧倒的に高いピスティと、理想が高く魔法の研究に没頭してしまいがちで男性に愛想をつかされやすい、同い年のヤムライハとは良くお茶会をしていた。
「男の人って言うのは、優しい顔してその実、内に秘めたるは野獣の如き凶暴性なのよ!どんなに良い人でも、中身は狼なんだからね!」
「スパルトスもそうなのかしら」
「スパルトスはもう、絶対ムッツリよ!」
余計なことまで思い出してしまったが、つまりはジャーファルも、狼なのだろうと思う。でも、それでも。それが今更やめる理由になどなり得ない。引き返すなど、そんな思考が#NAME1#の中にあるはずもなかった。