第2章 冷たい胸に火が灯る
(私、ジャーファル様と両想いになれた…)
5年前、新興国として話題だったシンドリア王国へ、#NAME1#は家族で移住した。
戦後のレーム帝国はかなり貧困しており、民の生活を守るどころか民衆からありとあらゆるものを巻き上げ、食べるものも無くして力尽きる人達が続出した。
今ではレーム帝国もかなり豊かになり、民のことを何よりも大切にする国家になっているとは聞いているが、#NAME1#はレームへ帰りたいと思ったことは一度もない。
シンドリアの地に初めて足を付けた時、移民の誘導を行っていたジャーファルに一目惚れしたのだ。落ち着いた雰囲気、柔らかい物腰、優しい笑顔。あの時、ジャーファルと目が合って、「もう大丈夫ですよ」と笑顔で言われていなければ、今の#NAME1#はない。
自分よりもだいぶ年が上だと思ったジャーファルが、まだ20になったばかりの、自分と2つしか違わない事を知った時は大層驚いたものだ。
その後は早かった。文官の試験があると聞いて直ぐに受けて合格し、ジャーファルの傍で文官として必死で働いた。いつの間にかジャーファルの左腕とまで呼ばれ(右腕はヒナホホの妹であるピピリカだ)外交にもジャーファルに連れられて何度か行った。大好きなジャーファルの役に立ちたいと、この5年常に前線で闘い続けた。
想いが報われる事などなくとも構わないと思っていたのに、ジャーファルの性事情に勝手に口を出した挙句、まさかの両想いなど。
「幸せすぎて死んじゃいそう…」
震える手を両手でギュッと包み込むように握りしめ、口元にもっていく。#NAME1#は今日、ついにジャーファルのものとなるのだ。