第10章 最終章 最後の歌
私の愛するミルカは、この時既に”魔道士”だった。
彼女は叫びながら国を囲うようにして幾つもの魔法陣を作り、水魔法を使って国の火を消し始めた。
「なっ・・・・・・なんなんだお前!?あれほど多くの魔法陣・・・」
ジュウトが驚愕している間に、彼女は一瞬で彼の右側へ行き、ユウナさんを保護して私の横へ運んだ。
「ミルカ・・・・・・・・・君は・・・・・・」
私が弱々しく名前を呼ぶと、彼女はいつも通りの優しい笑顔を見せてくれた。
止めたかった。抱きしめて、一緒に逃げたかった。
でも、分かってしまった・・・
彼女のあの笑顔は、決意の意を表していた。
彼女は、普段聴かない低い声で歌を歌った。
すると驚いたことに、ジュウトやシンと戦闘中の二人まで、耳を押さえて苦しみだしたのだ。
「う”っ・・・・・・ぁぁあああああ!!!」
そして、汚い声を挙げたかと思うと―――――――――――
一瞬にして、消えてしまった。
逃げたのか・・・はたまた彼女が消したのか。
おそらく後者が正解なのだろう。としら、彼女が使った魔法は・・・歌を利用した音魔法か?
しかし、そんなことまで出来るとは・・・彼女は本当は、途轍もない力を持った魔道士だったのか。
驚愕しているのも束の間。私は彼女の異変に気付いた。
明らかに、弱っている。
そういえば以前、ヤムライハに
「どんな魔道士でも、例えマギでも、体中の魔力を使い切ってしまったら死んでしまうんです」
と聞いた。
彼女は元々魔力を持っていなかった。
今はあのネックレスの力を借りて魔法を使っているのだろう。
だとしても・・・・・・このまま国の火を消し続けていたら、
彼女は・・・・・・・・・・・・・・・
予想は、現実となる。
彼女はその場に倒れてしまった。
「ミルカーっ!!!」
私は急いで駆け寄った。