第10章 最終章 最後の歌
*NAME1#目線*
私はなんて馬鹿なんだろう。
早く誰にも知られずに国から逃げて追われて死ねば良かったのに。
そうしたら誰も傷つかなかったのに。
恋を知り、愛を知り、それ無しでは生きられなくなってしまった。
自分の命が狙われていたことまで忘れるほど、私は愛に溺れていたんだ。
そのせいで、ヤムライハ様やピスティ様、ジャーファルさんも傷つけてしまった。
彼の武器が当たった時、雷が纏われていたから正直とても痛かった。
それでも彼に心配をかけたくなくて笑ったのに・・・・・・
きっと上手く笑えていなかったのだろう。
彼は地に手と膝をついて、悔しそうに泣いている。
私のせいで。
どうして私は何もできないのよ。死にたいくらいに自分が嫌いになりそうだわ。
『何故そう思う?』
何故って・・・そりゃあ、魔法も使えなくて大切な人を守れない私なんて、必要ないじゃない。
『忘れたのか。かつてお前の祖父が託した力と呪文を』
何よそれ?
ていうか・・・・・・・・・貴方誰なの?
『我か。呪文を思い出せばすぐにわかるさ。
お前は無力ではない。お前は力について忘れているだけだ。
さあ、呪文を唱え力を解放しろ。大切な者を守るために』
呪文・・・?あ、もしかして!
おじいちゃんが教えてくれた、あれかしら・・・
やってみる価値はありそうね。
私は大きく息を吸い込み、呪文を口にした。
「汝よ、我に力を。
我は精霊の守護者、ウレリアの血族である」
唱えた瞬間、国中が白い光に包まれた。