第10章 最終章 最後の歌
*ジャーファル目線*
五人の女性達がそれぞれ戦いに行ったので、私はジュウトと名乗る敵だけを標準に定め攻撃を放っていた。
しかし彼はずっとこちらに攻撃を仕掛けず、片方の腕でミルカを捕らえ、もう片方の腕で防御魔法を貼っていた。
しかも、かなり硬いものを。
「くっ・・・・・・このっ・・・!!」
早く。早く怯えた彼女を救い出したい。
私はその一心で眷属器を防御魔法に叩きつけていた。
ひび一つ入りそうにない、光る膜に。
以前ヤムライハに、防御魔法はマギでない限り、破れる可能性は0ではないと聞いた。
ならば、例え破れる可能性が1%だけだとしても、それに全て託したい。
大好きな人のためならば、どんなに少ない希望でも信じたい。
その思いが届いたのか、防御魔法にひびが入り始めた。
「よしっ・・・・・・!これなら・・・」
手に渾身の力と雷を纏い、眷属器を叩きつけた。
パリィイイイイン!
と音を立てて膜が破れ、私の腕は勢いでそのまま振り下ろされる。
「ぁ・・・・・・・・・」
私はその腕を止めることができなかった。
彼女の、ミルカの手の甲が、私の眷属器に斬られてしまった。
浅い傷だった。しかし、良かったとは言えない。
何故こんなことになったのか。
ジュウトが、膜が破れる寸前にミルカをこちら向きに移動させたのだ。
「ぁあ・・・・・・!!う・・・・・・」
彼女は痛そうに呻いている。
「貴様・・・・・・・・・!!」
私の顔は、一瞬で狂気に歪んだ。
「はっ・・・はははは!!どうだ政務官殿、愛する女を自ら怪我させた感想はあるかあ?」
不敵に笑う相手を前に、私は絶望的な顔で膝をつくしか出来なかった。
「ジャーファルさんっ・・・・・・・・・大丈夫、です。これくらい、平気ですよっ」
彼女が、無理して笑っている。
私のせいで。
もう、何も出来ない。攻撃したら、きっとまた彼女に当たってしまう。
もう・・・・・・終わりだ。
私は無様にも敵の目の前で涙を零しながら、手をついて俯いた。