第5章 ネックレスは悲劇を呼ぶ
市場は多くの人で賑わっていて、どこも繁盛していた。私が買いたかった物もちゃんとあり、すぐに買うことが出来た。
買い物が終わって軽く伸びをすると、脳裏にジャーファルさんの姿が浮かんだ。
(そうだ、早く帰って彼を安心させてあげなくちゃ)
彼は困った人で、仕事中も私の事を考え、寂しがっているらしい。
そんな事言われたって困りますと言ったこともあったけど、
彼は不機嫌そうに頬を膨らませることが何度もあった。
まあ、可愛らしい姿を見られてそれはそれで嬉しいのだけれど。
そんなことを思い出し顔をにやにやとさせながら、私は早く帰るために近道である裏路地に入った。
狭いこの道は、今日はいつもより人通りが少なかった。いや、まったくと言ってもいいかもしれない。
少し気味が悪くて、早く帰ろうと足を速めた時――――――
短い髪の女性と肩がぶつかった。
「あっ・・・・・・!すみません、お怪我は・・・」
「いったーい!何してくれてんのよコイツ・・・あら、好都合」
とっさに謝ると、言い終わらないうちに彼女が口を開いた。
好都合って、何のことだろう。
「サリ・・・この子、知ってる?シャナは知らない・・・と思う」
「知ってるわけないじゃない。それにあたしたちの目標はただ一つでしょ?」
サリ、と呼ばれた女性は私と体がぶつかるくらいまでの距離に来て――――――――
私の宝物の、青い雫のネックレスを引きちぎった。
「あっ・・・・・・!?」
「これを見つけ出して兄さんに渡すこと。そういうわけなの。お馬鹿なお嬢さん、ありがとうね!きゃははは!!」
サリさんは私のネックレスを右手でしっかり持ち、左手をこちらにかざしてきた。
するとたちまち、その手の前には幾つかの闇色の塊が出来た。
それは私めがけて飛んできて、私の身体に傷を負わせた。
「うっ・・・いた・・・・・・」
「ええーっ!こんなのも避けられないの!?なーんでこんな一般人がこれを持ってるのかしらねえ!ねえシャナ?」
「サリ、声大きい。気づかれちゃうから、さっさと逃げるよ・・・・・・と、思う」
彼女達は軽くやりとりを交わし、私に背を向けた。
嗚呼、私の宝物が奪われてしまう。
駄目・・・!