第5章 ネックレスは悲劇を呼ぶ
「ミルカ、スープは出来てきたかい?」
「ええ、もうすぐよ!おじいちゃん」
「そうか・・・っと、いたた」
「大丈夫?腰が痛むの?」
「はは、大丈夫だよ。・・・・・・ミルカ、こっちに来なさい。これをあげよう」
「・・・・・・?何それ?」
「これは君の先祖の持ち物だったネックレスだ。青い雫の飾りがついていて綺麗だろう?」
「わあ、綺麗・・・!もらっていいの?」
「もちろんさ。実はそれはただの飾りじゃないんだ。
もし君に何かあった時、君の大切なものが危険に晒された時、それがきっと君に力を貸してくれるよ。君は――――――――
××の××だからね」
「え・・・?おじいちゃん、最後何て言ったの?聞き取れないよ」
「はは・・・いいさ。いずれわかるだろう。さあ、スープを頂こうかな・・・・・・・・・」
私があの時もらったネックレスは、今も昔も私の宝物。
持っていると、何故か暖かい何かに守られているようなそんな気がするから、寝る時や湯浴みの時以外は大体つけている。
「へえ、そうなんですか・・・いいですね、そういうの」
話を聞いた彼は満足げに頷きにこりと笑った。
それと同時に、時刻を知らせる鐘の音が響いた。
「はい・・・・・・あっ!そうだ、お買い物!!」
急に私は料理に使う香草を買いに行かなくてはならなかったことを思い出した。
これがなければ、今夜作る料理は完成しない。今すぐ買いに行かなくちゃ!
「外へ行くのですか?私もついて行きたいですが・・・王の様子を見に行かなくてはなりません。だから・・・」
急に声を低くした彼は寂しそうな顔をして、私の体に手を回してきつく抱きしめた。
「ジャーファルさん・・・く、くるしいっ」
「気をつけて、行ってらっしゃい」
ジャーファルさんは私の額にそっとキスをすると、私を解放し王の部屋へと向かった。
「・・・ちょっと、ずるいわ。そういえば、前にもこんなことあったわね・・・・・・」
私は額に残る彼の温度を手で触って確かめながら市場へと向かった。