第39章 ホテルの鬼
杏「む、姿か……。まず女の鬼かと思ったのだが男だった。見た目は…目立った特徴はなかったな。上着はトンビコートだったという事は覚えている!紛れ込む事を得意とする鬼だったのだな!」
「と、特徴がない……。顔は覚えていますか…?そういう血鬼術なのかしら…。ううん、それより杏寿郎さんが撒かれてしまう速さなんて……、」
姿を見たにも関わらず情報が少ない事に桜は劣勢になってしまったのではと不安を覚えた。
それを見て杏寿郎は驚いた様な顔をする。
杏「鬼なら疾うの昔に斬ったぞ。皆呆れる程 君に見惚れていたのでな、抜刀しても誰も気が付かなかった。」
「えっ!?ば、抜刀……見たかった…………。」
任務同行の際も戦いが見えない場所で待機する事が多かった桜は残念そうに眉尻を下げつつも肩の力を抜いた。
それを見ると杏寿郎は微笑みながらぽんぽんと頭を撫でる。
杏「鬼は群れないのでホテルに巣食う鬼は先程の鬼だろう。だが日は暮れた。つまりは外も屋内も鬼が出ておかしくない時間帯だ。それにホテルの主人にも話をしなければならない。だが、」
そこで言葉を切ると杏寿郎はぐっと顔を近付ける。
その目はめらめらと燃えていた。