第39章 ホテルの鬼
杏(嫌な気配はしない。下心無く真剣に見ているだけか…感心だな。あとは…、)
杏「桜!!十分だッ!!!」
ぽーっとする頭にも辛うじて聞こえた杏寿郎の大きな声に桜は作曲者に悪いと思いつつも曲をショートカットしながらアレンジして繋ぎ、早めに終わらせた。
そして集中の糸が切れた桜が男に恐怖を抱くより前に 杏寿郎は人目につかない場所まで桜を常人に見えぬ速度で連れ去った。
「あ、ありがとうございます…!さすが杏寿郎さん…すごい速さですね、どよどよしちゃってますよ……。」
桜が慌てて服を戻しながらどよめいているレストランに目を遣ると杏寿郎は眉を顰めつつも心配そうな目をして腕の中の桜を抱き締めた。
杏「自覚がないのか。俺ではない、君がああさせたんだぞ。任務中でなければ俺もただでは済まなかった。」
「…え……?」
そう言いながら杏寿郎が自身は固くはなっていないものの答えを教える様に下半身をグリッと押し当てると桜は赤くなる。
そして再びレストランの方を向いて男達が皆揃って前屈みになったり座り込んだりしている様子を確認した。
「……は、反省します。」
杏「そうしてくれ。だが任務、人命第一だ!そして鬼は無事見つけられたぞ、君の手柄だな!!よくやった!!!」
「え!どんな姿ですか!?」