第39章 ホテルの鬼
―――
杏(桜はピアノを弾けたのか。それにしてもあの姿を他の男に見せる事になるとは…早く鬼を見つけねばならないな…!!)
曲が盛り上がってくると桜は ぐっと眉を寄せて目を細める。
(目立ちたいしリストさんには悪いけど ここはコンサートじゃない…あまり強くし過ぎないように……レストランなんだから不自然じゃないように気を付けなきゃかえって怪しまれる……。)
曲に入り込んでしまう質の桜は目を閉じて少し辛そうな表情をしながら強さを抑えた演奏をした。
しかし、曲と共に昂ぶった桜はまた薄く目を開くと同時に色香を放った。
(……このピアノ飾りじゃなかったんだ…調律完璧……弾いててすっごく気持ちいい………、)
杏寿郎は桜の様子に眉を顰めたが、せっかく作った機会を無駄にすまいと男達を見渡して不審な者を探した。
杏(あれは怪しいな。)
見つめた先には桜を『 "ただ" 見ている者』と『見て "いない" 者』が居た。
杏寿郎は先に見ている者の元へ早足で近付く。