第39章 ホテルの鬼
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レストラン前に着いて比較する人が増えると、やはり杏寿郎の髪は目立った。
そして―――、
「来たときも思いましたけど、夕方になってよく分かりました…おかしいです。」
杏「うむ、行方不明者が出るホテルにも関わらず利用客が多いな。立地故なのだろうが格好の餌場だ。」
ロビーは男性客でごった返していた。
只でさえ変わった毛色であるのにこの場で女連れとあれば余計に目立つ。
桜は慌てた。
(…杏寿郎さんが目立つのは仕方ない…私がどうにかしなきゃいけないんだ…………あっ、)
「………杏寿郎さん…。危ない目には遭わないようにするので止めないでくださいね。任務第一!ですよ。」
そう言うと桜は首を傾げる杏寿郎からニ、三歩離れて大きな窓のカーテンに一瞬隠れ、杏寿郎がベッドに夢中になっている間に一度身に着けておいた藍色のドレスに装いを変える。
そして髪を結い上げながら他の場より一段上がったピアノを置いてある小さなステージへ歩いていった。
(男の人なんていない…来れない……ここはいつもの… "ただの" 私だけのステージだ……。鬼の視線もお客さんの視線もなるべく引きつけて……杏寿郎さんよりも、誰よりも目立ってやる……!!)