第39章 ホテルの鬼
杏「………………。」
その音を聞いて杏寿郎は黙りながら眼力の強い目を桜へと向ける。
しかし桜は目が合わないうちに視線を逸していた。
杏「……桜?聞いていたか?この音、堪らないだろう。この音に合わせて揺すられる君を想像するだけで、」
「荷物も置きましたし準備も出来ましたし…聞き込みとか色々しに行きましょう!陽の当たらない部屋とか…もしかしたら従業員さんの中に紛れ込んでる可能性だって…!ほら、いきましょう!」
そう言いながら杏寿郎をベッドから引き剥がそうと腕を引っ張ると杏寿郎はあっさりと離れ、日輪刀をベルトに差して長いコートの下に隠した。
杏「うむ!!しかしあまり聞き込んでは目立ってしまう。まずは一階のレストランへ行こう!!!」
「そうですね!」
―――
「レトロ…レトロだ……素敵………。」
大きな階段から改めてロビーを見下ろした桜は小さな声で呟いた。
杏「君もこういった所に憧れるのか!では "約束" に加えてくれ!必ず君をホテルへ連れて行く!!」
「はい!!」
そのフレーズに厭らしさを感じない二人はただ にこにこと微笑みあった。