第39章 ホテルの鬼
「そんなに心配してくれるなんてとっても嬉しいですが、このお洋服本当に気に入っちゃったんです。お姉さんが善意で接してくれている事はちゃんと伝わってましたよ。楽しかったです!ありがとうございました。」
そう言ってふわりと花の様に微笑むと女も嬉しそうに微笑んだ。
桜は元々自身の服をその店で見繕うつもりでいた。
そして杏寿郎の服に合わせようと思っていたが、結局杏寿郎が選んだ服はシンプルな黒い物であった為 悩んだ末になるべく目立たない様なくすんだ桃色のワンピースにした。
それと同じ色の帽子も付いている。
杏寿郎も同じく帽子を持っていたが――、
(潜入……一番向いていないんじゃないかしら…。)
杏寿郎はフォーマルな装いに似合う様に髪を一本に結って帽子を被っていたが ゆらゆらと揺れるその髪色がどうしても目についた。
「あの、杏寿郎さん……、髪の色がとっても目立っています。見る者によっては杏寿郎さんが何者であるかまできっちりと分かる程に…。」
杏「むぅ…。」
桜はそう言いながら杏寿郎の着る小さなマントの様な物をピッピッと引っ張って杏寿郎が髪を結った時に出来た皺を伸ばす。
(シャーロック・ホームズが着てた服みたいで格好いい……。)