第39章 ホテルの鬼
杏「桜!どうした!!顔が赤いが体調でも崩したのか!!!」
「えっ!?…た、体調は大丈夫です…!!ただ…、た、ただ……、杏寿郎さんが……洋服を…………、」
そこまで言って更に赤くなると杏寿郎は続きを察してにっこりと微笑んだ。
杏「ああ、俺の見慣れぬ装いに赤くなってくれていたのか!!相変わらず愛いな、ありがとう!!!」
大きな声で真っ直ぐな愛情表現をする杏寿郎に桜は思わず両手で顔を覆った。
女(本当に可愛らしい…!)
女「奥様奥様!奥様も当てられるだけでも当ててみませんか!?似合うお品が山ほど…っ、」
「えっ、あぅ…、」
桜は時折見せる押しに弱いところを見せ、杏寿郎の隣で女の従業員と杏寿郎の目を楽しませた。
女の従業員は買わようとする下心は全く無く、本当にただ桜に服を当ててみたかっただけの様で嬉しそうに目を輝かせている。
(なんだか娘を溺愛するお父さんみたい…かも……。)
最初は戸惑ったが女の従業員は心底楽しそうな様子であり、そして歳も近かった。
それ故に自身と遊んで楽しんでくれる友人を思い出した桜はすぐに打ち解け、そして気に入った服を一着だけ購入した。
それに女は眉尻を下げて困った様にする。
その服屋の従業員に在るまじき様子に桜は思わず笑ってしまった。