第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
最近の槇寿郎はまた自室に篭りがちになっていた。
そしてその理由に心当たりがあった桜は返事がない事に眉を顰めた。
(わたし…何ですぐに気付いてあげられなかったんだろう……。一刻を争う。…こんな風に利用しちゃいけないとは分かっているけど…、)
「…あ、明け方……十二鬼月を斬った後、更に上弦の参の鬼が現れ 杏寿郎さんの鳩尾にぽっかりと穴が空きました。」
それを聞くと槇寿郎はスパンッと勢い良く襖を開けた。
そして杏寿郎の隊服を見て口を開ける。
杏「桜…今は元気なのだからその事はわざわざ伝えなくても良かったのではないか。」
「ごめんなさい…口実に使いました。ですがどうしても確かめたいことが…、」
桜はそう言いながら杏寿郎には申し訳なさそうな表情を向けたが 部屋の中に視線を移すと途端に険しい顔付きになった。
「槇寿郎さん…その座布団退けてください。………吐血、なされたのではありませんか。腹水も元に…。」
槇寿郎は不自然な場所に置かれたその座布団を退かさず、そして否定もしなかった。
その様を見て桜は眉尻を下げ、杏寿郎は目を大きくする。
「引退されてるから槇寿郎さんもなかった事にされたんですね…。本当にごめんなさい、すぐに気が付けなくて…。早く一ノ瀬家へ行きましょう。私には治療できないんです。ユキに会って早く治してもらわないと取り返しがつかない…。」
杏「父上に治療を施していたのだな。父上、支度をしておいて下さい!!桜、俺等もすぐに支度をするぞ!!」
それに桜が頷くと槇寿郎が眉尻を下げる。
槇「ま、待て…だがあそこは…、」
「駄目ですよ。絶対に行きますので。」
桜が凛とした意志の強い声を出してその場をあとにすると槇寿郎は一人残された部屋で小さく息をついたのだった。