第1章 神様が望んだ関係
白猫の低く静かな声にいつの間にか俯いてしまっていた桜が顔を上げた。
そして、姿勢を伸ばすと緊張した声を出す。
「はい…。」
その声に反応するように白猫はゆっくり瞬きをした。
『…桜の気持ちに応え、私は神であることをやめよう。』
白猫は努めて穏やかな声を出す。
桜は少し目を大きくしたが、次の言葉を待つように何も言わずに見つめ返した。
白猫はそれを確認してからまた口を開く。
『――だが、こうやってお話しできるのは………これが最後だ…。』
こみ上げる寂しさが苦しく、白猫は思わず余計な事を言ってしまった。
桜の目が更に大きく開かれ、瞬く間に涙が溢れてくる。
白猫はハッとして失言を後悔するも、桜の涙を見ていられず目を背けた。
そして一つ息をつくと、また桜に向き直って鼻先で涙を拭う。
『最後まで聞きなさい。』
白猫の言葉は、最後の会話を噛みしめているようにゆっくりとしている。
『何もかもがなくなるわけではないんだよ。桜が私の願いを聞き入れてくれれば、私は桜の中で生き続けられる。』
「ねがい…?ずっと…?」
『ああ。』