第36章 任務同行
顔は出さなかったがその声を聞き、さらに杏寿郎の後ろに女の足が見えると前田は目を大きくさせた。
前「その履き物では少し短い様ですね。編み上げのブーツを用意しま、」
杏「隊服を作り直して頂きたい!!!」
そう言われると前田という丸眼鏡を掛けた男はバッと視線を上げ 杏寿郎を『信じられない』という目で見た。
杏「それにあの羽織りは何だ。君はどこまで知っている。」
ユキとの関係を知った上で作った訳ではなかった前田はその言葉に首を傾げる。
前「体の形をはっきりさせるあの大胆な隊服の上に敢えて清楚な羽織りを合わせる事によってあの作品は完成するのです。」
杏「君の考える事は理解し難い!それに寸法を誤っていたぞ!!釦の数を減らさない様に伝えたがあれでは意味がない!それも計算のうちなのか!!」
そう言いながら杏寿郎は自身の胸の釦を指差した。
しかし眉を寄せる杏寿郎の視線を受けながらも前田は怯む事なくただただ真剣な目で見つめ返す。
前「では採寸を…、」
―――ゴッッ
前田が下心満載の声色を出すと、見兼ねた女性の隠が後ろから道具箱のような固い物で前田の後頭部を思い切り殴りつけた。