第1章 神様が望んだ関係
桜は空を見上げず、膝を抱えて座り込むと俯いた。
「ユキさまが神様じゃなくても私はここへ来ます。」
ぎゅっと膝を抱く腕に力が入る。
「ユキさま…神様をやめられないのですか…?」
そんな桜の思わぬ一言に目を見開く。
――神をやめる…
白猫はフッと目を細めて笑うと、『いい案だな…。』と呟いた。
ユ(そうか、この子は私が神でなくとも構わないのか…。)
じわじわと大きくなる焦燥感と矛盾するように胸は温かくなっていく。
ユ(……やはりこの子は愛おしい。優しい子だ。)
―――そして、特別だ。
桜の言葉によって、とうとう白猫は自身が長年抑えてきた気持ちをハッキリと自覚してしまった。
ユ(……とうとう来てしまったのか…随分前から覚悟していたというのに、こうも呆気なく訪れると覚悟が揺らぎそうだ。)
そう思うと神らしからぬ焦がれるような瞳を桜へ向けそうになる。
ユ「……。」
それでもなんとか踏み止まり頭を振った。
ユ(……だめだ、もたもたしている時間などない。この気持ちが見つかる前に消えなければ……。)
姿も知らない相手に恐怖を覚える。
緊張した気配を感じたのか桜は心配そうな瞳をしていた。
そんな瞳を見つめてから足元に視線を落とす。
ユ(…躊躇っている場合ではない……この子の為だ…。)
白猫は一度目を閉じてから意を決した。
『桜、よくお聞き』