第33章 準備期間
その後廊下で捕まえた仲居に水琴に話す時間があるかどうかを訊いてもらうよう頼んでから杏寿郎は再び桜の居る部屋へ向かった。
杏「桜…もう起きてしまったのか。まだ一時間も経っていないぞ。」
杏寿郎が廊下にあった膳を手に襖を開けると桜は布団に入ったまま上体を起こしてユキと話していた様子だった。
「杏寿郎さんこそ…。体綺麗にしてくれたんですね、ありがとうございます。」
そう言って微笑む桜は疲労故か まだふわふわとした空気を纏っていた。
杏寿郎はそれを見て少し眉尻を下げると膳を置いて桜の側に膝をつく。
杏「俺は問題無い。一晩起きている事にも体を動かす事にも慣れている。それよりここでの用事が済んだら煉獄家へ帰って夜に備えて寝ようと思っているのだが桜はどうする。まだここに滞在したいか。」
そう問われると桜はぽーっと力を抜いていた目をパッと見開き、眉尻を下げて首を横に振った。
「私も一緒に帰りたいです!!」
即答する桜に杏寿郎は微笑むと優しく抱き寄せて頭を撫でる。
杏「うむ、分かった。俺はこれから水琴さんが時間を作ってくれれば昨晩の鬼について話しに行くつもりだ。君はここで何か済ませておきたいことはあるか。」
「あの…お部屋を血で汚したので謝りたいです。」
杏「それなら俺も穴を開けたな!このままでは坂本と澤村のせいになる。二人で謝りに行くか!」
それに桜が元気良く頷くと杏寿郎はまた頭を撫で、食事を取るように促したのだった。