第33章 準備期間
杏「噂を流してくれ。『炎柱 煉獄杏寿郎には溺愛する婚約者がいる』とな。それから『他の男に手を出される事は勿論、口説かれる事も耐え難いと思っている』とも流して欲しい。」
杏「あとは君らが彼女と手を合わせた際 俺に殺気を飛ばされた話でも付け加えておいて貰えれば尚良い。誇張しても構わない。ただ、桜には悟られないように注意してくれ。十中八九俺が怒られるのでな。」
そう言い終えて二人を大きな目で見つめると二人は黙ってこくこくと何度も頷いた。
それを見ると杏寿郎はパッと空気を明るいものに変え、いつもの笑顔を浮かべる。
杏「ではこの話はお終いだ!!もう一つの話だが昨夜水琴さんと何を話したのかについて訊きたい。私用を優先し君達に任せっきりにしてしまって大変申し訳無かった! 」
二人は杏寿郎の切り替えの速さに呆けたが、茂雄はすぐにハッとすると座り直して姿勢を正した。
茂「い、いえ!正直な所 水琴さんにあの鬼の最期を説明しにくかったのですが、夜が更けた頃 ここへ来た彼女に尋ねられてしまって…、」
隆「意外とあの人落ち着いてましたよ。」
茂「夜更けに男二人の部屋に来たんだから普通ではないだろ。…水琴さんには『貴女を喰おうとした事を悔やんで自身を斬って欲しそうな態度だった、そして最期には貴女に謝っていた』…と伝えました。」
杏「そうか、ありがとう!」
杏寿郎はその報告に短く返事をすると二人に改めて労いの言葉を掛け 早々と部屋をあとにした。