第33章 準備期間
杏「坂本、澤村。今入っても良いか。」
杏寿郎は二人の部屋の前に立つと静かに声を掛けた。
するとあからさまに動揺したような物音と固い声が返ってくる。
スッと襖を開くと二人は正座をして俯いていた。
杏寿郎はそんな二人の姿を見ると小さく息をつき、その前に座る。
杏「話が二つある。桜と水琴さんについてだ。」
そこで言葉を切ると杏寿郎は二人の肩にばふっと手を乗せた。
杏「まずその様に怯えなくて良い。桜の色香は異常なんだ。若い健全な男ならああなる事は仕方なかったと分かっている。」
その柔らかい声と言葉に二人は安堵から泣きそうな顔を上げる。
しかし杏寿郎の目を見ると肩をビクッと揺らし、固まって冷や汗を流した。
杏寿郎は頭では仕方ないときちんと分かっており 自身でも二人に怒るまいと決めていたが、目の色だけは隠せずにいたのだ。
その二人の反応に杏寿郎は目を細める。
杏「…ああ、隠せていなかったか。すまない。だが先程の言葉は嘘ではない。頭では分かっているのであまり気にしないでくれ。ただ代わりにしてもらいたい事がある。聞いてくれるか。」
茂「…っ…もちろんです!!」
隆「お…、俺もやります…。」
それを聞くと杏寿郎の目は少し柔らかいものになった。