第1章 神様が望んだ関係
もう、桜を普通の人の子として見れなくなってきているのだ。
――この子だけを守りたい。
湧き上がるその想いにずっと蓋をしてきたが、限界が近いことを感じていた。
それは信仰者が桜のみだから、ただそう感じているのかもしれない。
だが、どうしても桜を贔屓しないでいられる自分を全く想像できず、そしてそれに恐怖を覚えるのだ。
――神らしくあらねばならない、公平であらねばならない
ユ(私が贔屓すれば、また昔のような悲劇が起こるかもしれない…もしそうなれば、次の被害者は桜だ…。)
そんな恐怖故に白猫は消えてしまいたいと切に願う。
自分を抑えていられるうちに…。
しかし、湧き上がる気持ちを今にも自覚してしまいそうだ。
『私はもう…神でいられる自信がないのだよ。』
白猫は空にひとつだけ浮かぶ雲を見ながらそう呟いた。