第32章 ※ちぐはぐな心と体
杏「激しい方は好きになれそうにないか?俺も優しく愛した時の堪らない幸福感はとても好きなのだが、激しく愛した時の君はまた違う魅力がある。出来るなら俺はどちらも見れるようになりたい。」
そう言われると桜は杏寿郎の背中をぎゅっと掴んで顔を胸に強く押し付けた。
「………好きになれそうにない…という訳では…、」
杏「そうか!!!」
桜の小さな声に杏寿郎はパッと表情を明るくさせたが、無理に顔を覗き込もうとせずにこにこと笑いながら桜を強く抱き締め直した。
杏寿郎が気を遣ってくれた事を察すると桜は体の力を抜いて頬を緩ませる。
「杏寿郎さん。」
桜は自ら杏寿郎の胸に手を当てて体を離すと杏寿郎を眉尻を下げながら見上げた。
大きな目で見つめ返す杏寿郎の髪にそっと触れると桜は目を伏せる。
「昨夜…、必要だと思ってわざと "怖い"、"嫌い"…と、きつい言葉を選びました。私が嫌がって泣いたら止めるっていう約束を破ったから…。」
杏寿郎の表情が分からない桜は言葉を切ると喉をこくりと鳴らした。
「…確かに止めてくれなくて怖かったです。でも、その怖さは行為というよりも…意志の疎通が出来なくなった怖さでした。つまり…さっきの愛し方自体が怖いというわけでは…ないのかもしれないです…。」
それを聞いて杏寿郎は大きな目を更に目を大きくさせる。