第31章 ※歩み寄ること
その言葉がみのるを殺す直前に男が放った言葉と重なり、押し倒されたまま桜は頭が真っ白になってしまった。
一方、抵抗しなくなった桜を見ると頼勇は自分に心を開いてくれている妻が帰ってきたような錯覚に陥った。
頼「水琴……水琴…………、」
頼勇は泣きながら桜に覆い被さると首元に顔を埋める。
しかし、そこにまるで自身のものだと主張するような噛み跡がある事に気が付くと青くなった。
頼「……まさか…煉獄様に体を許したのか………?」
杏「ああ。俺の女性だという印だ。離れてくれ。」
その静かな声に頼勇が目を大きくして振り返ると、声色に反して余裕の無い険しい顔をした杏寿郎が部屋の入り口に立っていた。
謎の筋肉痛で痛む体で姿を表したユキから頼勇の暴走を聞き、水琴を二人に任せて全速力で戻ってきたのだ。
杏(ご先祖だからか頼勇さんの事は怖がっていなかった筈なのに桜はどうして抵抗しないんだ。)
杏「桜!しっかりしろ!」
杏寿郎は急いで桜の側へ寄ると、腕で制するように覆い被さっている頼勇を退かせる。
そうされて初めて頼勇は桜が震えている事に気が付き、また辛そうな表情になった。