第30章 弟と姉の絆
顔を隠すように背を向けて座らされていた女は桜とそっくりな顔をしていた。
そして杏寿郎の姿を確認すると目を見開く。
水「…炎のような色の髪と瞳……もしかして…お義父さまが言ってた…れ、煉獄様……ですか…?」
杏「うむ。確かに俺の名は煉獄杏寿郎だ。勇重さんを助けたのは俺ではなく父の槇寿郎だが。」
それを聞き、更に特別な意味を持つ羽織りを見ると水琴は青くなって手を出させまいと鬼の前に出る。
しかし今度は鬼が守るように水琴を下がらせたのを見て杏寿郎は目を大きくさせた。
杏「話には聞いていたが俄に信じ難い光景だな。だがもう人が喰われている。水琴さん、分かっているのだろう。其処に居るのは貴女の弟ではない。ただの鬼だ。」
杏寿郎はそう言うと、今度は足音を感じた後ろに声を掛ける。
杏「水琴さんが無事で尚且つ足も自由になったのは実に目出度いが、戦いを止めに自ら巻き込まれに来そうだ!ここを離れるぞ!俺が鬼を洞穴から押し出す!ついて来い!!」
茂「…は、はい!!……おい、あの女の人桜さんと同じ顔をしてるぞ…。」
隆「追いついたばかりなのに…。双子ってやつだ。知らねーのかよ。血縁って言ってただろ。」
水「ま、待って下さいッ!!!」
酷く切羽詰まった声に三人が目を遣ると水琴は肩で息をして瞳を揺らしていた。