第30章 弟と姉の絆
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鬼が守る洞穴に着くと杏寿郎は笑みを消してピリッとした空気を纏った。
杏「本当に "元" か?まあ良い。西陽も消えた。鬼が街に下りる前にこちらから行くぞ。」
杏寿郎の言葉に二人は喉をこくりと鳴らして頷く。
そして道を知らずに走り出した杏寿郎を追って洞穴へ入っていった。
茂(凄い!速すぎる……ッ!だけど……、)
茂「煉獄さん、待って下さい!道を激しく間違えています!!」
隆「勘弁してくれ…っ」
杏「む!すまない!!確かにこちらから嫌な気配を感じたのだが!!」
―――ドゴォッ
杏寿郎がそう言い終わらないうちに数メートル先の壁に穴が空き、十五歳程のまだあどけなさが残る男の子の顔をした鬼が道を塞ぐように出てきた。
鬼「またお前らか…。新しいのもいるな。増援か…?頼むからもう放っておいてくれ…殺すなと言われてるんだ…。」
杏「妙な事を言う鬼だな。だが放っておく事は出来ない。君はまた女性を喰いに行くのだろう。」
それを聞くと覇気のない空気を纏っていた鬼はピクッと眉を動かす。