第29章 大神さまの正体と目的、暴力の訳
「きょ、杏寿…、」
杏「君がここに一人残るのなら跡を残す事を許して欲しい。良いか。」
その程度でユキを連れて行ってくれるのなら安いものだと桜がすぐに頷くと、杏寿郎は満足そうに微笑む。
そして、振り袖の襟を緩めると桜の首に噛み付いた。
「……っ!!」
思ったより強く噛まれ、桜がビクッと体を揺らすと杏寿郎は噛み跡に優しく口付けを落とす。
杏「俺が帰るまでは此処の様に治してはならないぞ。」
そう眉尻を下げて微笑みながら跡の無い桜の項をするりと撫でた。
それにハッとすると桜は顔を赤くしてこくこくと頷く。
それが愛らしくて、杏寿郎は満足そうに微笑んで頬を甘く撫でると最後に額に優しく口付けを落として桜を解放した。
そして纏う空気を変えてバッと立ち上がる。
杏「ユキは声を掛けたら門へ来てくれ!桜は聞きたい事が沢山あるので出来れば帰りを待っていて欲しい!では、行ってくる!!」
「は、はい!お気を付けて…!」
杏寿郎はそう言うと あっという間に部屋を出ていってしまった。