第29章 大神さまの正体と目的、暴力の訳
杏「そうか。桜を家に閉じ込めておくなど…元より到底叶わない願いだったな。君の覚悟を忘れた失礼な考えだった。」
そう言うと杏寿郎は膝立ちになり、自身を静かに見つめる桜の元へ寄って 腕の中に小さな体をしっかりと収めた。
「杏寿郎さん…?」
杏「すまなかった。君は強い覚悟を持って自ら前線へ行き、人を救う俺達の頼もしい仲間だ。ただ巻き込まれた女性ではない。」
そう言うと杏寿郎は体を離し、剣を握った時と同様の使命に燃える目を桜へ向けた。
杏「共に頑張ろう。」
「…っ!……はいっ!!」
杏「だが!!!……今晩は待て。」
杏寿郎はそう言うと 目を大きくする桜の額に人差し指をトンッと当てる。
杏「事情を知っているだけに気になるだろうが、お館様からまだ許可が出ていない。鍛錬も欠かした。」
そう言われると期待を抱いていた桜は体を揺らして眉尻を下げた。
「で、では…、ユキなら付いて行っても良いですか…?私はここで見える方のユキの体で大人しくしているので…。二人がかりでも手こずっている鬼なのでしょう…?」