第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
茂「な…癒猫様……頭を、」
ユ『頼む。桜の願いを聞いてやってくれ。』
――――――
一方、杏寿郎は要から文を受け取ったばかりの千寿郎に驚かれながらも隊服に急ぎ着替え、千寿郎が手早く作ってくれた握り飯を持つとすぐに屋敷をあとにした。
杏(水琴さんは二年もどこに居たのだろう。二年経った後に鬼に殺される、か。享年が分かっているという事は遺体が見つかったのだな。水琴さんだと分かる程に喰いかけだったのだろうか。)
桜を抱えて走っていた時は 桜の体を気遣って速度を落としていたが、今度は一人であった為杏寿郎は あっという間に一ノ瀬家へ戻って来た。
そして出迎えてくれた者に大きな声で挨拶をすると、桜達の部屋へ行く前に隊士のいる部屋へ向かった。
杏(水琴さんの亡くなり方が妙だ。彼女について何か手掛かりがあるか彼ら、に………桜…?)
杏寿郎は隊士の部屋の中から聞こえる桜の嬉しそうな明るい声に、目を大きくしたまま固まる。
そして断りもせずに襖を勢い良く開けた。